症例
院長が経験した、具体的な症例を紹介します。
「在宅療養でどんなことができるのか」を知っていただき、ご自身、ご家族様の療養の仕方の参考にしていただけましたら幸いです。
症例1:100歳の家とおばあさん
私が訪問診療を始めた、今から20年前、医師になって2年目の頃の話です。
患者さんは100歳になろうかという年齢の、おばあさんのWさんです。
Wさんは一人暮らしで、一軒家に住んでいました。蝉の抜け殻がたくさんついた木の柵を開け、植物が鬱蒼と生い茂った庭を掻き分けて行くと家があって、昔の古い造りで、土間があって縁側がありました。
Wさんと同様に家も100年くらい歳をとっている様相で、静かで暗くて涼しくて、古いものが沢山あって、その中のいつも同じ場所にWさんは座っていました。
Wさんのお兄さんは軍医だったらしく、まだ若くて男前だった私には「昇平さん、昇平さん」ととても好意的に接してくれました。
しかし、彼女の中では序列があり、医師である私は最上位、看護師は最下位だったらしく、「私たちの言うことは全然聞かない!」といつも師長さんは笑って言ってました。
当時の私はまだまだ経験も浅く、Wさんの日々の訴えに対処することで精一杯だった記憶があります。気難しいところがあるWさんが心を開いてくれたのは、私が歌舞伎役者のように男前だっただけではなく、一生懸命さが伝わっていたのかもしれません。
私は家庭医ですが、家庭医療学では患者さんとの関係性を重視します。信頼していない医師の薬なんて患者さんは飲んでくれないし、その先生の言葉も価値を持ちませんから。
Wさんから頂いた経験は、私の医療の大事な基礎の一つになっています。
